スズメバチの多様な食餌が明らかに
近年、昆虫食の重要性が再認識されている中、神戸大学と岡山大学が共同で実施した研究が注目を集めています。この研究では、シダクロスズメバチ(Vespula shidai)が食べる多様な餌に焦点を当て、DNAメタバーコーディングを用いてその実態を解明しました。634個体に対する解析の結果、昆虫やクモだけでなく、驚くべきことに鳥類、哺乳類、両生類、爬虫類、魚類など総計324種の生物を捕食していることが確認されました。
伝統と科学の融合
伝統的な食文化として、長野県や岐阜県では「蜂の子」が広く親しまれていますが、これまでのところ、蜜蜂に供給される餌についての理解は不十分でした。しかし、今回の研究で科学的な視点からその食性が明確にされ、飼育者が経験を基に脊椎動物の餌を与えていたことが正当化されました。このように、地域の伝統と科学が合わさることで、昆虫食の新たな可能性が示唆されたのです。
飼育方法の重要性
この研究において特筆すべきは、飼育環境と野生の環境における餌の多様性です。飼育巣では、主に人間が供給した肉(鶏肉や鹿肉など)が使用されている一方、野生巣には多様な脊椎動物が供給されるため、その食性における違いも見られます。こうしたデータは、飼育者がどのように蜂の健康と生産性を保つかに重要な影響を与えるでしょう。
一部の飼育者は、飼育した蜂の味が野生のものとは異なると感じており、その理由として「与える餌の違い」を挙げています。研究者たちは、これが実際に受けた経験に基づいていることを証明しました。蜂の管理を行う側が、科学的根拠に基づいた知識と、実際に目にした経験を融合させることの重要性が伺えます。
持続可能な資源としての「蜂の子」
また、研究の結果は、「蜂の子」を持続可能な食料資源として再評価する鍵となるでしょう。昆虫食は、栄養価が高く環境に優しいため、今後ますます重要性を増すと考えられています。このような背景を踏まえ、本研究は地域に根付く昆虫食の伝統を科学的に支える重要な役割を果たすことでしょう。今後は、養蜂の実践や飼育方法の改善に向けた具体的な知見が寄与し、地域社会にさらなる発展を促進することが期待されています。
研究の成果と今後の可能性
この研究成果は、2025年5月14日に「Journal of Insects as Food and Feed」誌に掲載され、広くその意義が認識されています。オンラインで発表された詳細な研究内容は、公式ウェブサイトにて確認可能です。この研究は科学と地域文化が交差する興味深い事例であり、私たちの食文化が持つ多様性を改めて考えさせられます。今後もスズメバチに関する研究が進むことで、より豊かな食文化が築かれることを期待しています。