岡山大学が発見したオオムギの遺伝子機構による品質改良の可能性

新たな発見

国立大学法人岡山大学は、オオムギの穂先に形成される「芒（ぼう）」の長さと硬さを調節する新しい遺伝機構を明らかにしました。この発見は、オオムギの品質や収量の向上に直結する可能性があり、農業界における革新的な研究成果となるでしょう。

芒とは何か

オオムギを含むムギ類の穂先に存在する針状の突起は「芒」と呼ばれています。これは光合成において重要な役割を果たし、その結果、作物の収量や品質に大きく寄与します。特に、芒が長くまっすぐなタイプは、栽培において有利とされ、収穫の際の効率を向上させます。

突然変異体の解析

今回の研究では、約40年前に岡山大学農業生物研究所で化学薬品によって誘発されたオオムギの突然変異体「short and crooked awn (sca)」が重要な役割を果たしました。この突然変異体は、通常のオオムギと比較して芒の発達が不完全であり、芒の細胞長や数の低下、さらにはセルロース量の減少が観察されています。

この変異の原因について、岡山大学大学院環境生命科学研究科の中村光希氏、資源植物科学研究所の武田真教授、池田陽子准教授らの研究チームが、詳細な遺伝子解析を行いました。研究を進めた結果、オオムギ特有の遺伝子「EMBRYONIC FLOWER 1（EMF1）」に異常があることが判明しました。この遺伝子はヒストン修飾を介して遺伝子発現を調整する役割を持つことが知られています。

新しい機構の発見

EMF1遺伝子の異常は、芒の形成に関する制御メカニズムに新たな知見をもたらしました。これにより、芒の長さや硬さを調節する新しい手法が期待されています。また、この新たな発見が他の有用な遺伝子の発現にも影響を及ぼす可能性があり、将来的には農業生産性の向上に寄与することが見込まれます。

研究成果の公開

この研究の成果は、2024年12月20日に「Plant and Cell Physiology」という国際的な専門誌に早期公開され、2025年1月23日に岡山大学の定例記者会見でも報告されました。研究者の方々は、長年の努力が実を結んだとし、今後の農業研究に大きなインパクトを与える成果となることを期待しています。