岡山大学がテラヘルツ波顕微鏡を用いて新型コロナウイルスを高感度検出
国立大学法人岡山大学は、テラヘルツ波ケミカル顕微鏡を用い、微量の検体中に存在する新型コロナウイルスのNタンパク質を高感度で検出する技術を開発しました。この研究は、大学院ヘルスシステム統合科学研究科の丁雪大学院生と紀和利彦教授の研究チームにより推進され、岡山大学病院医療技術部と共同で行われました。
新型コロナウイルスの早期検出へ
従来の新型コロナウイルス検査方法では、PCR検査などの時間を要する手法や、初期段階で精度が低くなる抗原検査の課題がありました。この新しい技術により、わずか500nLという微量のサンプルから新型コロナウイルスNタンパク質の検出が可能になりました。
先進的な検出技術
テラヘルツ波ケミカル顕微鏡は、Nタンパク質と特異的に結合するアプタマー(人工RNA)を利用しています。このアプローチによって、Nタンパク質の検出精度は従来の手法に比べて格段に向上しました。実際、検出されたNタンパク質の重量はわずか0.5ピコグラムと算定され、一桁以上の高感度となっています。この研究成果は、2023年11月19日に学術雑誌「Sensors」に掲載され、業界内でも注目を集めています。
今後の展望
岡山大学は、今後3年間でこの技術のさらなる性能向上を目指し、迅速かつ正確に新型コロナウイルス感染者を特定できる装置の社会導入を計画しています。丁雪大学院生は、「この技術は新型コロナウイルスだけでなく、将来的に出現するかもしれない未知のウイルスにも応用できる可能性があります。パンデミックを防ぐための新しい装置を実現し、社会に貢献したい」と述べています。
資金とサポート
この研究は、日本学術振興会からの支援を受けており、丁大学院生は岡山大学次世代研究者挑戦的研究プログラム(OU-SPRING)の一環として、研究に専念する環境を提供されています。
岡山大学は、日本国内での研究・開発の最先端を進みながら、持続可能な社会の実現にも貢献していく方針です。この新しい検出技術が、今後の新型コロナウイルス対策において重要な役割を果たすことが期待されます。