蓮田ナーシングホーム翔裕園の座位訓練:新たな介護の形
埼玉県蓮田市に位置する介護老人保健施設「蓮田ナーシングホーム翔裕園」は、社会福祉法人元気村グループによって運営されています。当施設は高齢者が自宅で生活を続けるために必要な支援を行い、日々新しい挑戦をしています。その一環として、今回「座位訓練」を取り入れ、利用者のADL(活動的日常生活)向上に取り組んでいます。
新たな視点でのノーリフティング実践
介護現場では、利用者の身体能力を維持しつつ職員の負担を軽減する「ノーリフティング」が導入されています。しかし、器具に依存することで利用者の筋力低下が懸念されることから、介護に必要なスキルを磨くため、昨年末に開催された「ノーリフティング推進協会全国大会」に参加する機会を得ました。この講演で得た知見は、機器に頼らなくても利用者の身体能力が向上する可能性を示唆していました。
その知識を活かし、私たちは座位姿勢を通じて介護の新しい手法を模索することにしました。座位姿勢をとることは、高齢者にとって新しい体験であり、ADLを維持する上で非常に重要です。ご利用者自身がリハビリに積極的に取り組むためのきっかけにもなります。
研究の概要と取り組み
研究は、2023年の5月から9月にかけて実施されました。具体的には、日々30秒以上、正しい座位姿勢をとることが身体にどのような効果をもたらすのかを観察しました。データ収集の際には、「支え無しで座位を保持できる時間」や「座位上での体重の左右差」を評価の指標としました。
初めに、5月に全体への周知を行い、6月からは実践が始まりました。この取り組みを通じて、職員と利用者の意識とコミュニケーションも向上し、職員にとっても新たな達成感を感じられる活動となっています。
結果と感想
調査の結果、利用者の座位保持時間は平均で219%も伸びたことが明らかになりました。一部の方は、座位姿勢を保持する時間が大幅に延びるなど、日常生活の質が向上したことが確認されました。また、これまではあまり話をしなかった利用者が活発に会話をするようになるなどの心理的変化も見られました。
職員からは、「利用者ができるようになるのを見て嬉しい」との声が上がり、コミュニケーションのきっかけが増えたことがポジティブな結果につながっています。ただし、業務負担の声もあったため、継続的な負担軽減の取り組みは今後の課題として認識されています。紙媒体でのデータ収集が、協力体制の向上へとつながるという効果も見られました。
今後の展望
座位訓練は、高齢者に対して全介助が必要な場合でも取り入れられる負担の少ないアプローチであり、ADL向上に寄与することが分かりました。日常生活に組み込めるこの方法は、今後の介護手法として大きな広がりを持つ可能性があると感じました。また、正しい姿勢を維持することで得られる安心感や職員のやりがいが重要であることも同時に認識しました。
今後、施設内での取り組みをさらに広げ、より多くの利用者にこの座位訓練を実践してもらえる仕組みを構築していきたいと思います。笑顔で過ごせる環境を目指し、元気村グループとしても引き続き努力を重ねていく所存です。