介護現場の業務効率化を実現する取り組み
近年、介護現場における労働環境の改善が急務とされています。特に、介護職員の残業時間が問題視されており、彼らの身体的・精神的な負担は大きな課題です。埼玉県さいたま市を拠点とする社会福祉法人元気村グループが運営する特別養護老人ホーム「みさとの杜翔裕園」では、この問題に対処するため、勤務時間の見直しと浴用リフトの導入を行いました。この取り組みによって、残業時間の99%削減と利用者の満足度向上を実現したのです。
1. 取り組みの背景
「みさとの杜翔裕園」では、入浴に伴う業務の効率化が求められていました。以前は、月間100時間に達していた残業時間が、介護職員の心身に大きな影響を及ぼしていました。特浴のシフトが週2回ということもあり、入浴支援の時間が限られていました。早番と遅番の勤務が重なるのは30分のみで、大幅な効率化が必要でした。
2. 勤務時間の見直し
そこで、早番と遅番の勤務時間を調整する決断がなされました。早番は6:30~15:30から7:00~16:00に、遅番は13:00~22:00から12:00~21:00に変更しました。この変更により、職員同士の重なる時間が増え、協力しやすくなったことで、入浴支援がスムーズになりました。また、シフトを自動で作成するソフトを導入することで、事前に配置人数を確認し、柔軟なシフト運営が実現しました。
3. 浴用リフトの導入
さらに、特別養護老人ホームとしての課題に留まらず、浴用リフトの導入がなされました。施設は2階に特浴スペースがありましたが、リフトの導入により、各ユニットの個浴で対応することが可能となりました。この結果、利用者の移動は1階内のみで完結し、特浴へ行く必要がなくなったため、時間短縮が実現したのです。
リフト浴の操作も簡易化され、利用者は「怖い」と感じることなく安心して利用できるようになりました。職員が付き添うことで、安心感がもたらされたのです。
4. 残業時間の大幅削減
このような取り組みを経て、残業時間は7月の48時間から8月には10時間15分、9月にはなんと1時間15分にまで削減されました。また、入浴支援の人数も増加し、1回の入浴対応で利用者数が3人から4人に増加し、1人あたりの時間を7分短縮しました。職員からのフィードバックも非常に良好で、動線の改善や身体的な負担軽減、安全性の向上といった要素が好評価されました。
5. 今後の展望
こうした成功をもとに、介護職員のワークライフバランスの向上を図りながら、引き続き業務効率化に努める必要があります。また、ICTやIoTの活用を通じて、さらなる効率化の可能性が広がっています。アナログとデジタルを組み合わせることで、書類作成の負担を減らし、職員が入浴支援以外の業務にも集中できる環境を整えていくことが求められます。
今後も「みさとの杜翔裕園」では、介護現場における質の高いサービスを維持しつつ、より多くの利用者が安全で快適な環境で入浴を楽しむための取り組みを続けていくことでしょう。