埼玉工業大学が進める新たな循環経済への挑戦
埼玉県深谷市に位置する埼玉工業大学(略称:埼工大)。その工学部生命環境化学科環境物質化学研究室を率いる本郷照久教授のチームが、環境問題に挑む革新的な技術を開発しました。特に、「峠の釜めし」として知られる陶器製弁当容器の再利用に焦点を当てており、廃棄物をリサイクルして内装用タイルを生成する新技術を完成させました。
釜めし容器のリサイクル技術の背景
峠の釜めしは、長い歴史と共に多くの人々に愛されてきた駅弁です。その容器は益子焼の土釜で作られており、熱々の弁当を旅先で楽しむためのものですが、近年では使用後の回収率が30%程度と低く、社会における廃棄物問題が顕在化しています。使用済みの釜はしばしば粉砕処理され、再利用されていないのが現状です。
このような問題を受け、埼玉工業大学の研究チームは、釜めしの容器を廃棄物ではなく資源として活用する新たなリサイクルシステムの開発に取り組むことになりました。
開発された技術の特徴
本郷教授の研究室では、釜の成分を分析した結果、主成分として石英(SiO2)とムライト(3Al2O3·2SiO2)の結晶が確認されました。この釜を陶器タイルとして再利用するために、メカノケミカル処理と呼ばれる環境に優しい手法を用い、粉末化した釜に機械的エネルギーを加え結晶の一部を非晶質化しました。
その後、ジオポリマー化反応を用いて、非晶質化した粉末にアルカリ活性剤を加えて60℃で反応させることで、タイルとしての強度を持つ硬化体を生み出しました。この方法は、高温焼成を必要とせず、エネルギー消費を大幅に削減することが可能です。実際、生成されたタイルの曲げ強さは、JIS A5209規格をクリアし、最大では48.3 N/mm²に達しました。
広がる応用可能性
この革新的なリサイクル技術は、釜めし容器だけでなく、他の陶器類や耐火レンガ、瓦などにも柔軟に適用可能です。さらに、タイルだけでなく、ブロックやパネルといった多様な形態の建材としても利用できる展望が開けています。
研究チームは、今後もさらなる研究を進め、環境配慮型の製品を多様化していくことを目指しています。
結論
埼玉工業大学の取り組みは、循環経済(サーキュラー・エコノミー)の進展に大きく寄与するものです。廃棄物を資源に変換するこの新技術は、環境負荷の低減が求められる現代において、次世代のリサイクルモデルとなる可能性を秘めています。
そのため、今後の展開に期待が寄せられると同時に、一般の人々にもこの取り組みを知ってもらい、より一層のサポートを得られることを願っています。