農文協85周年記念の『みんなの有機農業技術大事典』が登場

農文協の記念出版『みんなの有機農業技術大事典』について

2025年の春、農文協（一般社団法人農山漁村文化協会）は創立85周年を迎え、その集大成として『みんなの有機農業技術大事典』を発刊します。発売日は3月10日。この大事典は、有機農業の技術や知見が集約されたもので、全国の農家や研究者が共同で執筆に参加しました。

有機農業の重要性とその背景

近年、農業界では持続可能な農業への関心が高まっています。特に2021年に農水省が発表した「みどりの食料システム戦略」の影響で、有機農業への注目はこれまで以上に集まっています。具体的には、農薬や化学肥料の使用を減らしながら、安定した生産を実現することが求められています。しかし、その技術や知識は現場の農家によって蓄積されてきたものであり、失われつつある先人の知恵を伝えることが大切です。そこで、この事典が生まれることになりました。

大事典の構成と特徴

この大事典は、2巻構成であり、全2244ページ。執筆陣は300人以上に及び、450本の記事が収められています。内容は「共通技術編」と「作物別編」に分かれており、有機農業の歴史や制度の仕組み、具体的な栽培技術が詳しく解説されています。また、索引を設けることで、約2000の用語を簡単に検索できるようになっていますので、知りたいことがすぐに見つかります。

特に「共通技術編」では、緑肥や天敵昆虫を活用した病害虫防除技術についても記載されており、全国各地の事例をもとに、実践的なノウハウを学ぶことができます。「作物別編」では、稲作や野菜、果樹や茶といった品目ごとに、それぞれの名人たちの経営事例が紹介され、具体的な課題解決の手法も学ぶことができます。

研究と農家の協力による成果

本書の特徴的な点は、農家の生の声が多く含まれていることです。有機農業が進化する中で、農家は実験錯誤を繰り返しながら独自の技術を開発してきました。例えば、米ヌカや光合成細菌を用いた防除技術は、現場で生まれた創造的なアイデアが光ります。また、農家の取り組みを支える国や県の研究者のデータも活かされており、理論と実践が見事に融合しています。

未来への憧れ

この事典は、簡易な実践書にとどまらず、次世代を見据えた農業技術の最新情報を集約した資料です。特に未来の農業においては、持続可能性が不可欠で、そのためには本書が必要不可欠な役割を果たすでしょう。農文協は、85年の歴史を持つ組織としてこの本書を通じて、すべての農家に新たな可能性を提供することを目指しています。