岡山大学の研究チームが行った最新の調査によって、タマネギにおける動原体の概念が大きく変わる発見がありました。この調査では、タマネギが持つ動原体の性質に着目し、特にセントロメアの動きに関する新たな知見が得られました。
セントロメアとは
まず、セントロメアとは何かを理解することが重要です。これは、染色体上の特定の位置に存在し、細胞分裂の際に重要な役割を果たす部分です。従来、セントロメアは動かない「ランドマーク」と見なされていましたが、今回の研究ではタマネギのセントロメアが移動することが発見されたのです。
動くタマネギの動原体の発見
この研究は、岡山大学の長岐清孝准教授と牛島幸一郎教授を中心としたチームによって行われました。タマネギ、ニンニク、ネギなどの系統を用いて実施されたセントロメアの解析から、同じタマネギの品種間および個体間でのセントロメアの位置が異なり、移動することが判明しました。これは、これまでの生物学的常識を根底から覆す結果だと言えます。
特に注目すべきは、ニンニクが持つ動原体のサイズです。この研究で、ニンニクには既知の中で最大のセントロメアが存在することも同時に明らかになりました。これにより、他の生物における動原体の多様性についても新たな視点がもたらされるでしょう。
新たな研究の可能性
この発見は、セントロメア研究の新たな可能性を示唆しています。今後の研究では、「なぜセントロメアは移動するのか?」や「他の生物でも同様の現象が見られるのか?」といった疑問を解明し、さらにはニンニク以上の大きさを持つ生物の存在についても探求することが期待されています。また、セントロメアを人為的に動かすことが可能になれば、作物の品種改良にも新たなアプローチが導入されるかもしれません。
研究者の言葉
研究を進める中で、長岐准教授は「高校の時にセントロメアは動かないと教わり、その不動の信念を持っていました。しかし今回、実際には動き回っていることが分かり、思わず『E pur si muove(それでも、それは動いている)』と言ってしまいたくなりました」と語っています。
参考文献
本研究成果は2025年6月10日、植物科学雑誌『The Plant Cell』にて発表され、詳細な情報は岡山大学の公式サイトに掲載されています。この新発見がセントロメア研究やバイオテクノロジーに与える影響については、今後の研究を通じて明らかにされていくことでしょう。タマネギやニンニクなど、身近な植物の中に多くの未知が秘められていることを考えさせられる重要な発見です。