高齢者の生涯学習と身体活動が促すポジティブな老い体験
近年、高齢者の加齢に伴う意識や体験の変化が注目を集めています。国立大学法人岡山大学の研究チームは、70歳以上の高齢者を対象に生涯学習と身体活動の重要性を探求する調査を実施し、新たな知見を得ました。
研究の背景
高齢者の主観的老いを測る指標の一つに「加齢に係る変化意識」があります。この意識は、加齢に伴って何を「獲得」するのか、また何を「喪失」するのかという二つの側面から成り立ちます。先行研究では、「獲得」の意識が高いほど主観的な幸福感が増し、「喪失」の意識が高いと抑うつ感が高まることが示されています。このため、ポジティブな老い体験を促進することが求められます。
調査の概要
今回の調査は、大阪大学の中川威准教授や兵庫教育大学大学院の山本康裕大学院生らを加えた研究グループが、878人の高齢者を対象に12カ月にわたる縦断的な研究を行いました。生涯学習の取り組みや身体活動の有無が、高齢者の意識や体験の変化に与える影響を検証しました。
発見された成果
研究の結果、生涯学習に参加している高齢者は、加齢に伴い「獲得」することへのポジティブな意識が高く維持され、逆に身体活動を積極的に行っている高齢者は「喪失」へのネガティブな気持ちが低く持続されることがわかりました。これは、高齢者がより満足したシニアライフを送るために、心の健康が重要であることを示しています。
研究の意義
今回の研究結果は来たる超高齢化社会において、健康的で豊かな生活を支えるための指針となることが期待されています。老年学や老年医学の分野において重要な示唆を提供するこの研究は、2024年11月にシアトルで開催されるGerontological Society of America年次大会でも発表される予定です。
未来への期待
研究チームは、太陽のように明るい老後を送るためには、日常生活の中での生涯学習と身体活動が鍵であると強調しています。これにより、多くの高齢者がポジティブな体験を持ち、心身ともに充実した老後を過ごせるよう支援していくことを目指しています。
高齢者の生活の質向上に向けたこの取り組みは、社会全体の幸福感を高めることにも寄与するでしょう。私たちも共に、より良い未来を築くために学び続ける意義を考えていきたいものです。