オキシトシンが導くラットとヒトの強い絆形成メカニズムを解明

最近、岡山大学の研究チームが、ラットがヒトの手に懐く際の神経回路のメカニズムを明らかにしました。この研究は、オキシトシンというホルモンがどのように機能するのかを探求し、動物と人間の間における愛着の形成に寄与する新たな知見を提供しています。

研究の背景

岡山大学の林姫花大学院生と坂本浩隆教授を中心とした研究チームは、ラットがヒトの手に懐くプロセスに関して、脳内のオキシトシン神経回路の重要性を発見しました。研究では、特定の脳領域である視床下部腹内側核腹外側部（VMHvl）が、オキシトシンを介して心地よい触覚刺激の効果を仲介することが示されています。

実験の概要

この研究では、若年期から思春期のラットに対し、ヒトの手による「ハンドリング」を行う実験が実施されました。このハンドリングにより、ラットは強い愛着を示すようになりました。特に、ハンドリングを受けたラットは、快感の証拠ともいえる50kHzの超音波を発声し、積極的にヒトの手に近づく行動を示しました。加えて、ラットはハンドリングを行った場所を好むようになることも確認されました。

神経回路の解析

研究チームは、薬理遺伝学（DREADDs）技術を利用してVMHvlのオキシトシン受容体の機能を抑制しました。その結果、ラットのヒトの手に対する愛着行動が減少することが確認されました。さらに、視索上核からVMHvlへの直接的な神経連絡を同定することで、この神経回路の役割が明らかになりました。

研究の意義

この研究成果は、動物の愛着行動の背後にある神経基盤を理解するための一助となります。また、アニマルセラピーや愛着障害に関する新たな理解や治療法の開発に寄与する可能性があると、研究チームは期待を寄せています。特に、オキシトシンが仲介する脳の変化を理解することで、動物との絆がどのように形成されるかを明らかにし、これが人間と動物の関係の深化に繋がるかもしれません。

研究者の声

坂本浩隆教授は、ラットがヒトの手に懐く現象の背後にある微妙な神経回路に言及し、「この研究は、種を超えた絆が形成されるメカニズムを理解するための一歩です」とコメントしています。林姫花特任助教は、動物同士の絆形成の仕組みが探求される中で、人間と動物の間にも同様の反応が存在する可能性を示唆しました。

この研究成果は、2025年6月5日に国際学術誌「Current Biology」で発表され、多くの学識者や医療従事者から注目を集めています。

岡山大学は、今後も研究を進め、動物と人間の間の絆の深まりに寄与する新たな研究成果を期待しています。「愛情ホルモン」と呼ばれるオキシトシンの深い謎に迫るこの研究が、私たちの生活にどのような影響を与えるのか、大いに注目されます。